障害年金と労災給付について

文責:所長 弁護士・社会保険労務士 鳥光翼

最終更新日:2025年04月15日

1 障害年金と労災給付は同時に受給可能

 労働災害や通勤災害によって障害を負った場合は、障害(補償)年金、傷病(補償)年金といった労災保険給付を受けることができます。

 さらに、その障害の内容と程度が障害年金の障害認定基準に定められた程度に達している場合、障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)は同時に受給することができます。

2 障害年金と労災給付を同時に受給する場合の支給調整

 障害年金と労災給付を同時に受給すること(=併給)ができる場合でも、支給原因となる障害が同一である場合は、労災保険給付の支給額を減らす形で併給調整がなされることになります(障害年金は全額支給されます)。

 併給調整がなされる理由は、障害年金と労災給付が調整されずにそのまま支給されると、受け取ることのできる年金額の合計額が、労災に遭う前に得ていた賃金よりも高額になってしまうためです。

 なお、労災保険からの特別支給金については調整の対象とはなりません。

3 労災保険給付と障害年金の併給調整の方法

 労災保険給付と障害年金の併給調整の方法は以下のとおりです。

 

⑴ 厚生年金+基礎年金の場合(=障害厚生年金1級または2級の場合)

  労災障害(補償)年金の額  73%

  労災傷病(補償)年金の額  73%

 

⑵ 厚生年金のみの場合(=障害厚生年金3級の場合)

  労災障害(補償)年金の額  83%

  労災傷病(補償)年金の額  88%

 

⑶ 基礎年金のみの場合(=障害基礎年金1級または2級の場合)

  労災障害(補償)年金の額  88%

  労災傷病(補償)年金の額  88%

 

 なお、併給調整後の労災保険給付の金額と障害年金の合計額が、調整前の労災保険給付の金額を下回ってしまう場合は、労災保険給付と障害年金を併給しても被災者の方に損が出ないよう、調整前の労災保険給付の金額から障害年金の支給額を差し引いた金額が労災保険給付の金額となります。

 また、20歳になる前に初診日がある障害について障害基礎年金を受け取っている場合に労災保険給付も受け取る場合は、障害基礎年金の方が全額支給停止となります。

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